FXは、チャートを徹底的に分析すれば、勝てるようになるのでしょうか?
FXは、リターンの大きい投資先として投資家を魅了し続けています。
短時間で大勝ちすることもあれば大負けすることもあるという、ギャンブル性の強いところがFXの魅力の一つです。
このFXの持つギャンブル性の高さのリスク対策として、
「マーケットを注視しチャート分析をすることで勝てるようになりたい」
と思うのが、よくあるトレーダーの姿ではないでしょうか。
このリスクの排除のためにマーケット情報を可能な限り分析することを”分析のブラックホール”と呼んだ人がいます。
マーケットやチャートの分析思考は、悲劇の始まりであり、一度は言ったら抜け出すのが難しいというわけです。
このFX初心者が陥りがちな”分析のブラックホール”の対策を提唱したマーク・ダグラス著の『ゾーン — 相場心理学入門本』について、今回はご紹介します。
FXで負けているのは聡明で真面目な勉強家たち

書店に行けば、チャート分析に関するあらゆる本が存在することがわかります。
それはあたかもチャート分析に関する書籍を読破し勉強を重ねれば、FXや株で億万長者になることができるかのようです。真面目で勉強家な人からすれば、勉強すれば結果がついてくると思わせてくれるこれらの書籍には思わず読んでしまうでしょう。
では、FXで負けるのは、マーケットの分析ができていない又はその分析能力が低い人だからなのでしょうか。
その答えとして、マーク・ダグラスは本書の中でこう言います。
トレードで失敗している人の大多数が社会的に名の通った聡明な人たちである事実を考えてもらいたい。
ゾーン — 相場心理学入門
マーケットでは投資規模が大きければ大きいほど儲けは大きくなりますので、社会で既に成功を収めた賢い人がその魅力に惹かれマーケットに参加してきます。ビジネスで成功する人は自信にも満ちているでしょう。
ただし、マーケットは、知性のあるトレーダーを必ずしも勝者にはしてくれません。
なぜなら、知性のある人ほど、マーケットを分析すればトレード上の正解があるはずだと考え、チャート分析に没頭するからです。
ですが、果たしてマーケットを分析すればトレードの正解が見えてくるのでしょうか。答えは、No.です。
マーケットをどれだけ分析しようがトレードの正解は導きません。なぜなら、マーケットは単なる情報だからです。マーケットが出す情報の意味は、その情報を受け取る人によって異なります。
マーケットはトレードの結果情報であり、そのトレードの結果に及ぼす変数はあまりに多すぎます。
もしマーケットに答えがあるならば、誰もが億万長者のトレーダーになれるでしょう。
トレードに常勝はありません。勝つときがあれば負ける時があります。特に、FXという勝者と敗者で成り立つ世界では、全員が勝者になることはできません。
他人とは違う思考を持つのが勝つトレーダー
では、チャート分析に没頭しないのなら、勝つトレーダーはどうやって勝てるようになったのでしょうか。
これについてマーク・ダグラスは、こう言及します。
最高のトレーダーは他人とは違った考え方をする。
(略)
勝者はある種の心構え(独自の姿勢)を確立し、逆境にもかかわらず規律と集中力、そして何よりも自信を維持できるのだ。
ゾーン — 相場心理学入門
トレードは勝つため、つまり、トレードを通じて自分が儲けるために行います。
しかし、この儲ける目的は、トレード開始時には達成しておらず、あくまで儲けられる”可能性”に賭けている状態であるだけです。
儲けられることが確定するのは、トレードを終えるときです。
そのため、トレードを終えるまでは、トレーダーは儲けられる可能性に賭けているだけなのです。
トレードの心構えとして、この「自分は儲けられる可能性に賭けていること」を理解していることが重要です。自分が勝つ可能性に賭けているだけと理解できていれば、あとは事前に決めた利食い、損切りルールに則り発注するだけです。
勝つ可能性に賭ける。つまり、トレードの結果、それが負けトレードになったとしても、可能性の結果として偶然負けになったと勝つトレーダーは考えます。
したがって、勝つトレーダーは、負けたことについて自分を責めたり、負けた原因を人やマーケットのせいにはしません。自分が負けたのは、偶然なのです。
この思考により、勝つトレーダーは自律と自信を維持することができるのです。
一方で、チャート分析に一辺倒のトレーダーは、トレーダを開始したときに、儲けられるとの絶対的な自信を持っています。
負けるなんてことは微塵にも考えません。「あれだけ時間と労力をかけたのだから私は勝って当たり前だ」と考えます。
負けトレーダーが行ったチャート分析の方法が、本屋で読んだFXで億万長者になった人の分析方法と同じであればなおさらです。
負けトレーダーからすれば、教科書どおりにトレードしたのだから、負ける気なんて毛頭ありません。
ところが、マーケットは非情です。儲けられる可能性に裏切られ、勝つどころか逆に損失を被った負けトレーダーはどういう心理状態になるか推測してみてください。
それはきっと、怒り、憎しみ、さらには後悔の気持ちでいっぱいでしょう。
これらの負けトレーダーの心理状態の行きつくところは、「復讐心」です。
そして、マーケットへの復習に燃えるトレーダーに冷静な判断ができるわけもなく、最終的にマーケットから去ることになるのです。
マーケットに再現性はない
勝つトレーダーが共通的に持つトレードの信念は何か。マーク・ダグラスはこう答えます。
確率的思考法を習得しているトレーダーは、同じ観点でマーケットに対処している。つまりミクロレベルでは、各トレードや優位性は唯一のものであると信じている。
ゾーン — 相場心理学入門
トレードは、勝つために行うものなので、勝てる可能性が高いと判断したときに行います。
そして、その判断は、マーケットの再現性の高さ、つまりチャート等の分析結果を基に行われます。
ですので、勝つトレーダーにとっても、マーケットやチャートの分析は必要でしょう。
しかし、その分析結果に対する思考が勝つトレーダーと負けトレーダーとで異なる、とマーク・ダグラスは説明します。
負けトレーダーは、現在と過去のマーケットにおけるトレンドやチャートの形を分析した結果を信じてトレードを行っており、過去に起きたことはまた起きると考えています。
ですが、マーク・ダグラスは、このマーケットの再現性に疑問を呈します。
なぜなら、トレンドやチャートの形が似ていようが、それらのトレンドやチャートを作り出すトレーダーの状態が過去と現在で一致することはないからです。
過去と同じトレンドやチャートが再現するためには、マーケットに参加するトレーダーの数や心理状況、社会状況、経済状況等、マーケットの情報を決定するすべての変数が過去と現在で全く同じである必要があります。しかしこのような状況は発生し得ません。
一方、勝つトレーダーは、分析結果がどうであれトレードに正誤はなく、トレードは確率で決まると考えています。
なぜなら、過去に似たトレードであっても、過去と同じことが起きる保証はなく、勝つか負けるかは結局確率であると信じているからです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
FXで伸び悩んでいる方の助けになればと思い、今回はマーク・ダグラス著の『ゾーン — 相場心理学入門本』 を紹介いたしました。
この本を読んだ当時、管理人はFXのマーケット分析に傾倒していた左脳人間でした。そのため、右脳を刺激してくれた本書はとても有益でした。
チャート分析もさることながら感情をコントロールすることの重要性を学んで、FXによるさらなる資産増を一緒に目指しましょう!
では、また!!
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